税理士を変更したい時の全手順|ベストなタイミング・引き継ぎ・注意点

現在の税理士との関係にどこか物足りなさやズレを感じつつも、
「どこに変えても大差ないのでは」「長年の付き合いだから関係を崩したくない」
と、そのまま契約を継続している事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
専門家を切り替えるとなると、手続きの煩雑さや人間関係のトラブルが頭をよぎるものですが、正しい手順を踏むことでスムーズに移行できます。
本記事では、税理士の変更を検討するよくある5つのきっかけを整理するとともに、角が立たない契約解除の具体的な文例や、前任の税理士から受け取るべき資料チェックリストなど、トラブルなく引き継ぎを完了させるための全手順を徹底解説します。
税理士の変更を検討する「5つのきっかけ」
1. 連絡がなかなか返ってこない(コミュニケーションのストレス)
「質問のメールを送っても数日返信がない」「急ぎの用件なのに電話がつながらない」といったレスポンスの遅さは、変更理由の1つに挙げられます。特に意思決定のスピードを重視する経営者にとって、迅速なコミュニケーションが取れない環境は、ビジネスにおいて少なからず影響を及ぼすこととなるでしょう。
2. 提案がまったくない(記帳代行・申告のみ)
「試算表や決算書は作ってくれるが、節税の提案や経営改善のアドバイスが一切ない」という不満です。業務が記帳や申告の代行に留まり、将来に向けたコンサルティングをしてくれない場合、高い顧問料を支払う価値を感じにくくなるでしょう。
3. 顧問料とサービス内容が見合っていない
「毎月固定の顧問料が発生しているにもかかわらず、経営に活きるアドバイスや具体的な関与が少ない」「サービス内容は変わらないのに、不定期に値上げされる」など、費用対効果への疑問もあるでしょう。
特に、「連絡が遅い」「節税の提案がない」といった実務面での不満が積み重なると、納得感はさらに低下するでしょう。
4. 担当者や税理士本人とのコミュニケーションのズレ
税理士も人間である以上、相性があります。「相談するのについ躊躇してしまう」「専門用語ばかりで説明がわかりにくい」「資金繰りや経営の悩みに親身になってくれない」といった感覚的なズレは、長期的な信頼関係を築く上で不信感を生む原因になるでしょう。
5. 税理士の引退や事業承継が気になる
税理士には定年がなく、長く現役で活躍される方も多い職業です。日本税理士会連合会が2024年に実施した第7回税理士実態調査では、60歳代以上の税理士が全体の53.6%を占めています。
長年お付き合いのある税理士が引退を考え始めたときに、事務所の後継体制が決まっていない場合は、今後の担当について早めに話し合っておきましょう。そのうえで、後継の見通しが立たない場合は、変更を検討するきっかけになるでしょう。
変更に最適なタイミング
ベストな時期 : 決算・申告の完了後(新事業年度のスタート時)
・決算・確定申告が完了した直後
区切りが良いひとつの事業年度の税務が完結しているため、前任の税理士も「ここまでが自分の仕事」と割り切りやすく、引き継ぎ資料の整理がスムーズになります。
また、新しい税理士にとっても、期中(年度の途中)から引き継ぐより、期首のタイミングから関与できる方が過去のデータ整理の手間が省け、より確実でミスのない処理が行えるでしょう。
避けるべき時期:繁忙期(12月〜5月)および 決算直前
一方で、以下の時期の変更は避けるか、慎重に進める必要があります。
・税理士業界の繁忙期(12月〜5月)
年末調整、償却資産税申告、個人の確定申告、3月決算の準備などが重なるこの時期は、どの税理士事務所も極めて多忙になります。現在の税理士への解約の連絡も通りにくくなり、新しく迎える税理士側も引き継ぎに十分な時間を割けない可能性があります。
個人事業主の場合のおすすめ時期
個人事業主の確定申告の期限は原則3月15日のため、「申告の完了後」はちょうど繁忙期の終盤にあたります。3月の確定申告が終わった後、4〜5月ごろに切り替えると、前年分の資料がそろった状態で引き継げ、その年の記帳や翌年の申告準備にも余裕を持って取り組めます。
法人の場合のおすすめ時期
法人は決算月によって繁忙期が異なります。決算・申告が完了し、新しい事業年度が始まったタイミングを目安にしましょう。3月決算法人であれば、5月末の申告が終わった後の6月以降が切り替えやすい時期です。
税理士の変更は年間を通していつでも可能なケースが多いです。
期中(年度の途中)であっても、クラウド会計を導入していてリアルタイムにデータが共有できている場合や、現税理士との関係が著しく悪化している場合は、決算を待たずに変更した方が良いケースもあります。
現在の税理士への断り方(角が立たない伝え方・文例)
税理士を切り替える際、「気まずい」「どう切り出せばいいかわからない」と悩む方もいるでしょう。
しかし、契約を終了することはビジネスにおいて通常の選択です。波風を立てず、スムーズに契約を解除するための理由の作り方と文例を紹介します。
角が立たない理由の伝え方
不満をそのまま伝える(例:「連絡が遅いから」「頼りないから」)と、関係がこじれ、資料の返却や過去の申告内容の確認をお願いしにくくなることがあります。
一方で、事実と異なる理由を伝えるのはおすすめできません。前任の税理士とは引き継ぎの間もやり取りが続くため、後から事実と違うと分かると、かえって信頼関係を損ないます。
おすすめは、事実の範囲で、不満ではなく「今後の方針」として伝えることです。
・事業方針やIT環境の変化
⇒「クラウド会計を中心とした運用に切り替えるため、その体制に合う事務所にお願いすることにした」
・サポート内容の見直し
⇒「事業の段階が変わり、資金繰りや融資の相談も含めて伴走してもらえる体制を求めることにした」
・グループや取引先の事情
⇒「グループ会社の税理士と統一することになった」(実際にそうした事情がある場合)
理由は短く伝え、詳しく説明しすぎないことも、角を立てないコツです。
実践メールテンプレート 断り方の文例
契約解除メールの文例(前半)
明確な件名と結論の先出し
件名で「契約に関する重要なお願いであること」を明記し、本文の冒頭で明確な「終了の意思表示」と「具体的な終了時期(決算・申告時)」を伝えることで、相手への誤解を防ぎましょう。
件名:【重要】顧問契約終了のお願い(株式会社○○)
〇〇税理士事務所〇〇 〇〇 先生
いつも大変お世話になっております。株式会社〇〇の〇〇です。
本日は、弊社の今後の税務顧問契約につきまして、大変心苦しいお願いがありご連絡いたしました。
突然のことで誠に恐縮ではございますが、今期(または〇月)の決算・申告業務の完了をもちまして、〇〇先生との顧問契約を終了させていただきたく存じます。
契約解除メールの文例(後半)
やむを得ない理由と感謝の表現
後半では、あらかじめ用意した「建前の理由」を差し込みつつ、これまでの親身な対応に対する心からの謝意を述べます。最後に引き継ぎについての要望を添えて、円満な着地へと導きます。
理由といたしましては、[※ここに理由を挿入。例:今後はクラウド会計を中心とした運用に移行するため、その体制に合わせて税務顧問の体制を見直すこととしたため]です。
これまで〇〇先生には、弊社の開業当初から親身に相談に乗っていただき、多大なるご尽力を賜りましたことを心より深く感謝申し上げます。
契約解除に伴う今後の手続きや、引き継ぎに必要な資料等につきましては、追って新しい税理士(または私)より確認のご連絡をさせていただきます。まずは書中(またはメール)をもちまして、略儀ながら契約終了のご挨拶とお願い申し上げます。
これまでのご厚情、誠にありがとうございました。
株式会社〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇
引き継ぎで受け取るべき資料チェックリスト
税理士を変更する際、自社の大切な財務・税務データを前任の税理士から確実に受け取る必要があります。
資料がそろっていないと、新しい税理士が過去の経緯を把握できず、今後の申告や税務調査への対応に支障をきたすおそれがあります。解約が確定したら、以下の資料が手元にあるかを確認し、なければ返却をお願いしましょう。
| 資料カテゴリ | 受け取るべき具体的な資料 |
|---|---|
| 申告書関係 | 確定申告書・決算書の控え(原則7年分、繰越欠損金がある場合は10年分)※勘定科目内訳書、法人事業概況説明書を含む |
| データ・帳簿関係 | 総勘定元帳、仕訳帳、試算表(最新月分まで)、固定資産台帳(紙・PDF・CSVなどのデータ) |
| 届出書関係(共通) | 消費税課税事業者選択届出書、消費税簡易課税制度選択届出書、適格請求書発行事業者の登録申請書の控えと登録通知書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書、棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書 |
| 届出書関係(個人) | 個人事業の開業届出書、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書 |
| 届出書関係(法人) | 法人設立届出書、青色申告承認申請書、申告期限の延長特例の申請書 |
| 給与・労務関係 | 源泉徴収簿、年末調整関係書類の控え、法定調書合計表の控え |
| 繰越・調査関係 | 繰越欠損金の明細、過去の税務調査の記録(指摘事項や修正申告の内容など) |
| 電子申告関係 | e-Tax・eLTAXの利用者識別番号(暗証番号はご自身で管理し、税理士に伝える必要はありません) |
| その他 | 前任の税理士に預けていた領収書、請求書、通帳のコピーなどの原本一式 |
※届出書は税務署だけでなく、都道府県・市区町村に提出したものも確認しておきましょう。
インボイス制度の切り替わり時期と重なる場合の注意点
2026年10月1日時点では、インボイス制度の「2割特例」が終了を迎える時期にあたります。
- 個人事業主
2割特例は2026年分が最後です。2027年分・2028年分は、納税額を売上税額の3割にできる「3割特例」に移行します(基準期間の課税売上高1,000万円以下等の要件あり)。 - 法人
2割特例は「2026年9月30日を含む課税期間」までで、決算月によって最終適用時期が異なります(たとえば3月決算法人なら2027年3月期まで)。法人には3割特例がないため、その後は一般課税か簡易課税での申告になります。
2割特例・3割特例を適用した翌期間から簡易課税に移る場合は、その期間の申告期限までに届出をすればよい特例があります。ただし、届出の期限を過ぎると、その期間は簡易課税を使えません。
また、免税事業者などからの仕入れに関する経過措置は、2026年10月1日から控除割合が80%から70%に下がっています。免税事業者との取引が多い場合は、あわせて確認しておきましょう。
税理士を変更する時期とこうした制度の切り替わりが重なる場合は、「自社がいつまでどの計算方式を使えるか」「簡易課税の届出は出ているか」を、新しい税理士との面談で必ず確認しましょう。
インボイス制度については下記の記事で詳しく解説しています。

変更時の注意点
税理士変更をトラブルなく進めるために、契約解除を伝える前に必ず確認しておくべき3つの注意点があります。
- 契約書の契約解除条項を確認する
- 会計データの取り出し方法を確認する
- 税理士の空白期間を作らない
1. 契約書の契約解除条項を確認する
現在締結している「税務顧問契約書」の解約に関する条項を、必ず確認しておきましょう。 契約書によっては、「解約の1〜3か月前までに申し出ること」といった予告期間が定められています。これを見落とすと、希望するタイミングで解約できなかったり、新旧の税理士への顧問料の二重払いが発生したりするおそれがあります。
2. 会計データの取り出し方法を確認する
自社で帳簿を入力している(自計化)のか、税理士に記帳代行を依頼しているのかで、引き継ぎの対応が変わります。 特に税理士事務所側の会計ソフトを使っている場合、契約解除と同時にデータへアクセスできなくなる恐れがあります。事前に「過去の仕訳データをCSV等でエクスポートできるか」を確認(不安な場合は新しい税理士に相談)しておきましょう。
あわせて、2024年1月から電子取引データ(メールで受け取った請求書やWebの領収書など)の電子保存が義務化されています。これまでのデータが、改ざん防止や検索などの要件に沿って保存されているかを、引き継ぎの前に確認しておきましょう。保存方法に不安がある場合は、新しい税理士に相談しながら、今後の運用ルールを整えていきましょう。
電子取引データの義務化については下記の記事で詳しく解説しています。

3. 税理士の空白期間を作らない
現税理士への解約連絡は、新しい税理士を決定した後に行うとよいでしょう。 先に契約を解除してしまうと、次のパートナーが見つかるまでの間、税務サポートが途切れてしまいます。そのタイミングで税務調査や突発的な相談事が発生すると、対応に困ることになりかねません。
基本的な手順は、次の順で進めるのがスムーズです。
- 新しい税理士を決める(面談・見積もり・契約内容の確認)
- 現在の税理士に解約を申し出る
- 前任の税理士から資料を引き継ぐ
- 新しい税理士が、税務署へ「税務代理権限証書」を提出する
- 新しい税理士がe-Taxで申告を代理送信できるよう、利用者識別番号などを共有して準備する
税務代理権限証書は、税理士が納税者の代理として申告や税務調査に対応するために提出する書類で、新しい税理士が作成・提出します。納税者が自分で税務署に「税理士を変更した」と届け出る必要はありません。
次の税理士選びで失敗しないポイント
税理士を変更しても、新しく選んだ税理士に同じ不満を抱いてしまっては意味がありません。次の税理士選びで失敗しないための基準はひとつです。
新しい税理士の面談時には、以下のように「前回の不満を解消できるか」をストレートにぶつけてみましょう。
返信が遅いことが不満だった場合
「基本の連絡ツールは何を使っていますか? チャットツール(Slack、Chatworkなど)でのやり取りは可能ですか? 原則何日以内に返信をいただけますか?」
提案がないことが不満だった場合
「定期面談の際、試算表の報告だけでなく、節税対策や資金繰りのアドバイス、同業種でよくある対策などの提案をしていただけますか?」
クラウド会計への対応を希望する場合
「クラウド会計(マネーフォワード、freeeなど)の導入支援や、ネットバンキング連携のサポートはお願いできますか?」
また、誰が実際の担当になってくれるのか、そして、その人と直接、迅速に連絡が取れる体制なのか(一人事務所や少数精鋭の事務所など)を確認することが、失敗しないポイントになります。
まとめ
税理士は、会社の成長や資金繰りをともに支える大切なビジネスパートナーです。
「長年の付き合い」という理由だけで現状維持を続けるのではなく、自社の成長スピードに合わせて一緒に走ってくれるパートナーへと見直すことが、事業を一歩先へ進めるきっかけになります。
まずは現在の契約内容や過去の資料状況を整理し、最適なパートナー探しをスタートさせてみてください。
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