会社設立(法人化)による節税メリット 8選 税理士が解説
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「個人事業主としての事業が大きくなってきたが、会社設立(法人化)すると節税できるの?」
「税金について、個人事業主と法人はどっちがお得?」
法人化を考えている個人事業主の方や、これから会社を設立する方は、法人化で使える節税の制度と、法人化によって増える負担の両方を知ったうえで判断することが大切です。
法人化による節税は、法律が認める範囲で制度を正しく使い、税負担を適正にするものです。社宅や出張手当、家族への給与などは、実態に合った運用をしていれば認められますが、勤務実態のない家族への給与や、規程どおりに運用されていない手当などは、税務調査で否認されることがあります。事実と異なる処理で税を免れることは脱税にあたり、節税ではありません。
当記事では、会社設立(法人化)で使える節税の制度と注意点を、2026年度税制改正を踏まえて解説します(2026年10月1日時点の法令に基づいています)。
会社設立(法人化)による節税メリット
法人化による節税メリットを7つにまとめました。
① 役員報酬(給与所得控除)の活用
② 家族への給料支給
③ 役員退職金の活用
④ 生命保険料の損金算入
⑤ 自宅(借家)の社宅化
⑥ 出張手当の活用
⑦ 欠損金(赤字)の10年間繰越控除
① 役員報酬(給与所得控除)の活用
法人化すると、事業の利益を「会社の利益」と「社長個人の給与(役員報酬)」に分けることができます。社長個人の役員報酬には「給与所得控除」が適用されるため、所得の水準によっては、個人事業主のときより税負担が軽くなる場合があります。
詳細な説明は以下の通りとなります。
個人事業主の場合
事業の総収入から必要経費を差し引き、さらに青色申告特別控除を差し引いた金額が事業所得となり、所得税・住民税の対象になります。
青色申告特別控除は、2026年分は最大65万円です。2027年分からは、複式簿記での記帳とe-Taxによる期限内申告に加えて、優良な電子帳簿の保存などの要件を満たすと最大75万円になります。一方で、65万円の控除にもe-Taxでの期限内申告が必須となり、紙で申告する場合の55万円の控除はなくなります(紙で申告すると10万円)。
【総収入】-【必要経費】-【青色申告控除】=【事業所得】← 所得税・住民税(・個人事業税)の対象
法人の場合
会社の売上から経費と役員報酬を差し引いた利益に、法人税等がかかります。社長個人が受け取る役員報酬には給与所得控除が適用され、残りに所得税・住民税がかかります。
【売上】-【経費】-【役員報酬】=【会社の利益】←法人税等の対象
【役員報酬】-【給与所得控除】=【給与所得】← 所得税・住民税の対象
給与所得控除額一覧(令和8年分・令和9年分)
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 220万円以下 | 74万円(本則69万円+特例5万円) |
| 220万円超〜360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超〜660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超〜850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円(上限) |
※2026年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられました。さらに、所得税では令和8年分・9年分、個人住民税では令和9年度分・10年度分に限り、特例として5万円が上乗せされます。
注意点
- 役員報酬は原則として毎月同額にする必要があります(定期同額給与)。金額を変更できるのは、原則として事業年度開始から3か月以内などに限られ、期中に増やした部分は損金になりません。
- 役員報酬の額に応じて、社会保険料(健康保険・厚生年金保険)がかかります。税金が減っても社会保険料が増えるため、手取りで比較しましょう。
② 家族への給与支給
会社を設立して、家族に従業員や役員として働いてもらい、その対価として給与や役員報酬を支払う場合、労務の対価として相当な金額であれば損金になります。家族に所得を分けることで、世帯全体の税負担が軽くなる場合があります。
ただし、次の点に注意しましょう。
- 家族を役員にする場合、役員報酬は社長と同じく定期同額給与などのルールに従う必要があります。
- 役員・従業員とも、仕事の内容に比べて不相当に高額な部分は損金になりません。
- 給与の額によっては、家族にも社会保険料や所得税・住民税がかかります。
個人事業主の場合との違い
個人事業主(青色申告者)も、次の要件を満たせば、生計を一にする家族への給与を「青色事業専従者給与」として必要経費にできます。
- その年の12月31日時点で15歳以上で、原則として年間6か月を超えて事業に専ら従事している必要があります。
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を、原則としてその年の3月15日まで(1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内)に税務署へ提出します。
- 届出書に記載した金額の範囲内で、労働の対価として相当な金額でなければなりません。
専従者になった家族は、配偶者控除や扶養控除の対象になりません。また、白色申告の場合は「事業専従者控除」となり、控除できる金額に上限があります。
※勤務実態のない家族に給与を支給したり、不相当に高額な報酬を支給する場合、税務署とのトラブルになる可能性があるため、ご不安がある方は専門家に相談することを推奨します。
③ 役員退職金の活用
個人事業主の場合、事業主本人は自分に退職金を支払うことができません。
会社設立(法人化)を行った場合はリタイア時に「役員退職金」を支給することができます。会社側では、不相当に高額な部分を除いて損金になり、受け取る個人側では退職所得として、他の所得より税負担が軽くなる仕組みが用意されています。
退職所得の計算(2026年10月時点)
- 退職所得控除
勤続20年以下:勤続年数×40万円(80万円に満たない場合は80万円)
勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数−20年) - (退職金−退職所得控除額)×1/2が課税対象
※役員としての勤続年数が5年以下の場合は、1/2にする計算は適用されません。 - 他の所得と合算せず、分離して課税されます
役員退職金の額は、最終の役員報酬月額・勤続年数・功績倍率などをもとに、不相当に高額にならない範囲で決める必要があります。
④ 生命保険料の損金算入
個人事業主が自分にかけている生命保険の保険料は、事業の必要経費にはなりません。所得税の「生命保険料控除」として、一般・介護医療・個人年金の合計で最大12万円まで所得から差し引けます(2026年分)。
法人の場合、経営者の万一に備える事業保障や退職金の準備として法人が契約する保険の保険料は、保険の種類や契約内容によって、全額または一部を損金にできます。
保険のタイプによって、損金にできることの意味が変わります。
- 解約返戻金がある保険
損金にした保険料は、将来、解約返戻金や満期保険金を受け取ったときに会社の収益(益金)になります(保険料の一部を資産計上している場合は、受取額との差額が益金)。つまり、課税のタイミングをずらす「課税の繰延べ」が中心です。退職金の支払い時期に解約するなど、受け取り時の使い道とあわせて設計しましょう。 - 解約返戻金がほとんどない保険(掛け捨て)
保険料を損金にできても、その分のお金は保障の対価として会社から出ていきます。税金が減る額より支払う保険料のほうが大きいため、「保障が必要かどうか」で判断する保険です。
また、2019年7月8日以後に契約した定期保険や医療保険などの第三分野保険は、最高解約返戻率が50%を超えると、保険料の一部を資産として計上する必要があります(最高解約返戻率が70%以下で、被保険者1人当たりの年換算保険料が30万円以下の場合などを除く)。節税だけを目的に加入するのではなく、保障の必要性とあわせて検討しましょう。
定期保険(保険契約者が法人)
| 死亡保険金の受取人 | 保険料の取扱い |
|---|---|
| 法人 | 損金算入 |
| 被保険者の遺族 | 損金算入(※1) |
※最高解約返戻率が50%以下の場合など、資産計上が不要な場合の取扱いです。
養老保険(保険契約者が法人)
| 保険受取人 | 取扱い | 特約保険料 | |
| 死亡保険金 | 満期保険金 | ||
| 被保険者の遺族 | 被保険者 | 給与 | 損金算入 |
| 被保険者の遺族 | 法人 | 1/2資産計上 1/2損金算入(※1) | 損金算入 |
| 法人 | 法人 | 資産計上 | 損金算入 |
※1 役員や部課長など特定の人だけを被保険者としている場合は、損金ではなく、その人への給与として扱われます。
保険の取扱いは、保険の種類や契約内容によって細かく異なります。契約前に税理士に確認しましょう。
⑤ 自宅(借家)の社宅化
個人事業主の場合、住んでいる家の家賃は、事業に使っている部分を除いて必要経費にできません。
法人化した場合は、会社が借りた住宅を役員社宅として社長に貸し、社長から一定の家賃(賃貸料相当額)を受け取ることで、会社が支払う家賃と受け取る家賃の差額を損金にできる場合があります。
賃貸料相当額の計算(国税庁タックスアンサーNo.2600)
- 小規模な住宅(床面積が、法定耐用年数30年以下の建物は132㎡以下、30年超の建物は99㎡以下)
建物と敷地の固定資産税の課税標準額などをもとにした算式で計算します。 - 小規模な住宅に該当しない借上げ社宅
会社が支払う家賃の50%と、算式で計算した額のいずれか多い金額になります。
よく見かける「家賃の50%」は、小規模な住宅に該当しない場合の基準です。小規模な住宅で50%を受け取っても、算式の額を下回ると差額が給与として課税されます。
注意点
- 賃貸借契約は法人名義で締結する必要があります
社長個人の名義で契約し、会社が家賃を支払うと、社宅にはならず社長への給与として扱われます。 - 賃貸料相当額は、社長から実際に受け取るか、役員報酬から毎月差し引きます
社宅規程を作成し、受け取りの記録を残しておきましょう。 - 床面積が240㎡を超える住宅などは、いわゆる豪華社宅にあたる場合があります
豪華社宅かどうかは、床面積だけでなく、取得価額や家賃、内外装などを総合して判断されます。豪華社宅にあたる場合は、算式ではなく、通常支払うべき家賃(時価)が基準になります。
賃貸料相当額の計算には固定資産税の課税標準額が必要なため、物件の所在地の市区町村などで確認します。具体的な金額は、税理士に試算してもらいましょう。
⑥ 出張手当
出張手当とは、一般的に出張した役員や従業員に対して会社が支給する手当のことを指します。
個人事業主の場合、事業上の出張の際に生じる旅費等の実費は必要経費になりますが、出張手当は必要経費にすることができません。
会社設立(法人化)を行った場合、規程に則り、社会通念上の範囲内での出張手当は損金となるため、節税効果があります。
※出張手当を支給する場合、事前に「出張規程」や「旅費規程」を作成し、出張する人の役職や出張の距離に応じた金額設定をしておく必要があります。
なお、この出張手当は個人としても非課税所得となるため、所得税の観点からもお得と言えるでしょう。
⑦ 欠損金の繰越控除制度を活用する
個人事業主(青色申告者)は、事業で生じた赤字(純損失)を翌年以後3年間繰り越して、黒字の年の所得と相殺できます。
法人の場合は、税務上の赤字(欠損金)を翌期以後10年間繰り越すことができます(2018年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金)。資本金1億円以下の中小法人等は、繰越控除前の所得の全額まで控除できます。
※資本金1億円超の法人などは、控除できる金額が所得の50%までに制限されます。
設備投資などで一時的に大きな赤字が出た場合に、その赤字を長い期間で活用できる点は、法人のメリットです。なお、欠損金を繰り越すには、赤字の事業年度から青色申告書を提出し続け、帳簿書類を保存しておく必要があります。
インボイス制度導入後の「法人成り」と消費税の考え方
インボイス制度の開始後は、売上1,000万円以下の免税事業者であっても、取引先との関係からインボイス発行事業者(課税事業者)になる場合があります。
法人成りをする際、消費税に関しては以下のポイントを押さえておくことが重要です。
新設法人は、原則として最大2年間は免税事業者になれる
資本金1,000万円未満で設立した法人(事業年度開始時点で判定)は、原則として設立から最大2年間、消費税の免税事業者になれます。ただし、次の場合は課税事業者になります。
- 設立1期目の開始から6か月間(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額が、いずれも1,000万円を超える場合(2期目から課税)
- 一定の大規模な法人グループが設立した法人の場合
個人事業主のときの売上は、新しく設立した法人の免税の判定には引き継がれません。
インボイス発行事業者になると、免税期間のメリットはなくなる
取引先が企業中心(BtoB)で、インボイスの発行が必要な場合は、設立初年度から登録することもできます。ただし、登録すると課税事業者になるため、免税期間のメリットは受けられません。一般消費者向け(BtoC)のビジネスなど、インボイスを求められにくい場合は、免税期間を活用してから登録を検討するなど、事業の形態に合わせて判断します。
2023年10月の制度開始に合わせて設けられた消費税の「2割特例」(納税額を売上税額の2割にできる経過措置)は、個人事業主は2026年分まで、法人は「2026年9月30日を含む課税期間」までで終了します。2026年10月1日以後に設立する法人は、2割特例を使うことはできません。
終了後、個人事業主には「3割特例」(2027年分・2028年分に限り、納税額を売上税額の3割にできる経過措置)が設けられていますが、法人は対象外です。法人の場合は、一般課税(本則課税)か簡易課税のいずれかで申告することになります。新設法人は、設立1期目の末日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、1期目から簡易課税を適用できます。
個人事業主のまま3割特例を使える期間と、法人化した場合の消費税の負担は大きく変わることがあります。法人化の時期は、消費税の計算方式もあわせて試算したうえで決めることをおすすめします。
インボイス制度については下記の記事で詳しく解説しています。

法人化で増える負担
法人化には節税の制度がある一方で、個人事業主のときにはなかった負担も生じます。
社会保険料
法人は、社長1人だけの会社であっても、健康保険と厚生年金保険への加入が必要です。保険料は役員報酬の額に応じて決まり、会社と本人がそれぞれ負担します。
個人事業主のときの国民健康保険・国民年金と比べると、保険料の総額が増えることが多く、税金が減っても手取りが減るケースがあります。一方で、厚生年金に加入することで将来の年金額が増える、健康保険の傷病手当金が受けられるなどの保障面のメリットもあります。
設立費用
会社の設立には、登録免許税がかかります(株式会社は資本金の0.7%で最低15万円、合同会社は資本金の0.7%で最低6万円)。
株式会社の場合は、さらに公証役場での定款認証の手数料(資本金の額などに応じて3万〜5万円)がかかります。紙の定款で作成する場合は収入印紙4万円も必要ですが、電子定款であれば不要です。
赤字でもかかる住民税(均等割)
法人住民税の均等割は、利益が出ていなくても毎年かかります。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の法人の場合、標準税率で年7万円です(自治体によって異なる場合があります)。
申告・事務の負担
法人の決算・申告は個人の確定申告より複雑で、税理士費用もかかることが一般的です。役員報酬の手続きや社会保険の手続きなど、毎月の事務も増えます。
法人税と所得税の税率の差異
個人の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる超過累進税率(5%〜45%)です。
所得税に、復興特別所得税(2027年分からは防衛特別所得税1%+復興特別所得税1.1%、合計2.1%)と住民税(10%)を合わせると、最高で約55.9%になります。さらに、業種によっては個人事業税もかかります。
一方、法人税は、資本金1億円以下の中小法人であれば、所得のうち年800万円以下の部分に15%の軽減税率が適用され、800万円を超える部分は23.2%です。地方法人税・法人住民税・法人事業税などを合わせた実効税率は、所得800万円以下の部分で20%台、800万円を超える部分で30%台が目安です(年度・資本金・所在地によって異なります)。
この軽減税率は、2027年3月31日までに開始する事業年度までの時限措置です。経済産業省は令和9年度税制改正要望で延長を求めており、延長されるかどうかは、2026年12月に公表される税制改正大綱で決まる見込みです。
また、2026年4月1日以後に開始する事業年度からは、法人税額から500万円を差し引いた残りに4%の「防衛特別法人税」がかかります。軽減税率を使う中小法人であれば、所得がおおむね2,400万円台までは課税されないため、多くの小規模な法人には影響がありません。
所得が増えるほど個人の税率は上がるため、ある所得水準からは法人化した方が税負担が軽くなる可能性があります。ただし、その分岐点は、役員報酬の設定や社会保険料、家族構成、消費税の扱いなどによって大きく変わります。税率だけで判断せず、自分の数字で手取りを試算することが大切です。
法人化するタイミングについては下記の記事で詳しく解説しています。

まとめ
会社設立(法人化)には、役員報酬の給与所得控除、役員退職金、社宅、出張手当など、個人事業主では使えない制度や、家族への給与のように個人事業主より使える範囲が広い制度があります。
一方で、社会保険料の負担、設立費用、赤字でもかかる住民税の均等割、申告の手間など、法人化で増える負担もあります。また、2026年10月1日以後に設立する法人は消費税の2割特例を使えないなど、制度の改正によって法人化の損得の前提も変わっています。
事業が軌道に乗って、利益が十分に出ている場合は、会社設立(法人化)の様々なメリット・デメリットを個人事業主のままの場合と比較することをおすすめします。
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