会社設立(法人化)による節税メリット 8選 税理士が解説
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「個人事業主としての事業が大きくなってきたが、会社設立(法人化)すると節税できるの?」
「税金について、個人事業主と法人はどっちがお得?」
法人化を考えている個人事業主の方やこれから起業して会社設立する方は、どのような節税方法があるか知ったうえで、行動を起こすことが得策です。
当記事では、会社設立(法人化)によって得られる具体的な節税メリット、最新の税制トレンドや検討する際の重要ポイントを解説します。
会社設立(法人化)による節税メリット
法人化による節税メリットを7つにまとめました。詳しく解説していきます。
① 役員報酬(給与所得控除)の活用
② 家族への給料支給
③ 役員退職金の活用
④ 生命保険料の損金算入
⑤ 自宅(借家)を社宅にする
⑥ 出張手当の活用
⑦ 欠損金(赤字)の10年間繰越控除
① 役員報酬(給与所得控除)の活用
一般的に、個人事業主の青色申告特別控除より、役員報酬の給与所得控除額の金額が大きくなるケースが多いため、法人化して事業所得相当分を役員報酬とした場合、節税メリットがあります。※
※所得やその他条件によります。
詳細な説明は以下の通りとなります。
個人事業主の場合は、事業の総収入から必要経費を控除した金額が事業所得として課税されます。
この事業所得は青色申告特別控除(最大65万円)を差し引いて課税計算されます。
一方、会社設立(法人化)した場合、個人事業主は社長になるため、会社から役員報酬(給与)をもらうことになります。会社側では役員報酬が経費(損金)となり、社長個人には給与の額に応じた「給与所得控除」が適用されます。
給与所得控除額は最低55万円から最大195万円まで認められており、青色申告特別控除よりも大きな控除枠を使えるケースが多いため、高い節税効果が期待できます。
個人事業
【総収入】-【必要経費】-【青色申告控除】=【所得】←所得税・住民税の対象
法人
【売上】-【経費】-【役員報酬】=【利益】←法人税等の対象
受け取った【役員報酬】に対して、給与所得控除が適用され個人に課税
給与所得控除額一覧(令和7年分以降)
| 給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 190万円以下 | 65万円 |
| 190万円超~360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万円超~660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万円超~850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万円超 | 195万円 |
※令和7年度税制改正により、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられ、適用範囲も年収190万円以下に拡大されています。
② 家族を社員として雇う
会社を設立して、家族に従業員や役員として働いてもらい、その対価として従業員給与や役員報酬を支払えば、その分を全額「損金」に計上することができ、節税のメリットがあります。
個人事業主(青色申告者)の場合は主に以下の要件を満たすことで家族に対しての給与支給額を必要経費にして節税することができますが、手続が煩雑かつ柔軟性が法人に比べて劣ります。
- その年の3月15日までに「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出
- 届出書記載の金額の範囲内かつ労働の対価として相当な金額での支給
※勤務実態のない家族に給与を支給したり、不相当に高額な報酬を支給する場合、課税当局とのトラブルにになる可能性があるため、ご不安がある方は専門家に相談することを推奨します。
③ 退職金
個人事業の場合は、事業主は退職金を受け取ることが出来ません。
会社設立(法人化)を行った場合はリタイア時に「役員退職金」を支給することができ、会社側は損金計上、個人側は退職金を支払うことで退職所得として大きな節税メリットを受けることができます。
退職所得の節税メリット(役員勤続5年超の場合)
・退職所得控除
20年以下:勤続年数×40万円
20年超:800万円+勤続年数×70万円
・控除後の金額をさらに1/2(半分)にして課税(※役員勤続年数が5年を超える場合)
・分離課税のため、他の所得と合算されず低い税率が適用されやすい
④ 生命保険料の損金算入
個人事業主の生命保険料控除は最大12万円が上限ですが、法人の場合は経営者の事業保障や退職金準備として加入する保険料の一部または全額を経費計上できます。
※現在の税制では、解約返戻率の高さに応じて損金算入割合(全額〜資産計上)が厳格に定められています。節税目的のみで加入するのではなく、リスクヘッジと合わせた設計が不可欠です。
なお、法人税法上の保険料の取り扱いは、保険種類、契約者、受取人などによって、取り扱いが変わるため注意が必要です。
【定期保険(保険契約者が法人)】
| 保険受取人 | 取扱い | |
| 死亡保険金 | 満期保険金 | |
| 遺族 | なし | 損金算入 |
| 法人 | なし | 損金算入 |
【養老保険(保険契約者が法人)】
| 保険受取人 | 取扱い | 特約保険料 | |
| 死亡保険金 | 満期保険金 | ||
| 遺族 | 被保険者 | 給与 | 損金算入 |
| 遺族 | 法人 | 1/2損金算入 1/2資産計上 | 損金算入 |
| 法人 | 法人 | 資産計上 | 損金算入 |
⑤ 自宅(借家)を社宅にする
事業用店舗や事務所のある個人事業主の場合、事業主が生活している住居費は事業との関連性が無いので、原則として経費にすることができません。
会社設立(法人化)を行った場合は、役員社宅の制度を利用することで家賃の一部を経費に計上できる場合があります。
※一般的には賃料の50パーセントを社宅の賃料にしているケースが多いですが、諸条件によって賃貸料相当額が変動するため、詳細は税理士などの専門家に相談しましょう。
経費に計上する場合は、法人名義で賃貸借契約を締結する必要があるため、注意しましょう。
⑥ 出張手当
出張手当とは、一般的に出張した役員や従業員に対して会社が支給する手当のことを指します。
個人事業主の場合、事業上の出張の際に生じる旅費等の実費は必要経費になりますが、出張手当は必要経費にすることができません。
会社設立(法人化)を行った場合、規程に則り、社会通念上の範囲内での出張手当は損金となるため、節税効果があります。
※出張手当を支給する場合、事前に「出張規程」や「旅費規程」を作成し、出張する人の役職や出張の距離に応じた金額設定をしておく必要があります。
なお、この出張手当は個人としても非課税所得となるため、所得税の観点からもお得と言えるでしょう。
⑦ 欠損金の繰越控除制度を活用する
個人事業主(青色申告者)はその年の事業活動による純損失を翌年以後3年間繰り越して、所得が発生する年に相殺することができます。
会社設立(法人化)を行った場合、税務上の赤字は繰越欠損金として翌年以後10年間繰り越すことができます。
※資本金1億円超や一部のケースでは、10年間の課税所得から「繰越欠損金控除前の課税所得の50%」までしか控除できない場合があります。
損失が出てしまった場合、その損失を繰越損失として使いきれるかどうかという観点では、個人事業主より会社(法人)の方がメリットがあります。
インボイス制度導入後の「法人成り」と消費税の考え方
インボイス制度が定着した現在、売上1,000万円以下の免税事業者であっても、取引先からの打診で「インボイス発行事業者(課税事業者)」を選択するケースが増加しています。
法人成りをする際、消費税に関しては以下のポイントを押さえておくことが重要です。
原則として設立1期目・2期目は免税事業者を選択可能
新設法人は、資本金1,000万円未満で設立した場合、原則として設立から最大2年間は消費税の免税事業者になれます(※特定期間の売上高・給与支払額条件などを除く)。
インボイス発行事業者になる場合でもタイミングを選べる
取引先がBtoB(企業間取引)中心でインボイス発行が必須な場合は設立初期から登録することもできますが、BtoC(一般消費者向け)ビジネス等の場合は、免税期間のメリットを最大限活かしてから課税事業者に転換するなど、事業形態に合わせた柔軟な対応ができます。
2023年10月の制度開始に合わせて設けられた消費税の「2割特例」(納税額を売上税額の2割に抑える経過措置)は、個人事業主は令和8年分(2026年分)まで、法人は2026年9月30日を含む事業年度までで終了する予定です。
終了後、個人事業主については新たに「3割特例」(2027年分・2028年分に限り、売上税額の3割を納税額とみなす経過措置)が設けられていますが、法人はこの特例の対象外となり、本則課税または簡易課税のいずれかを選択する必要があります。
法人化のタイミングによっては消費税の納税負担が変わってくるため、設立時期とあわせて検討することをおすすめします。
インボイス制度については下記の記事で詳しく解説しています。

法人税と所得税の税率の差異
所得税は利益が増えるほど税率が高くなる超過累進税率を採用しており、住民税(一律10%)と合わせると最大55%まで高くなります。
一方、中小法人の税率は比較的安定しており、所得(利益)が年間800万円以下の部分については軽減税率が適用され、実効税率は約21〜25%程度に収まります。
個人での課税所得が800万〜900万円を超えてくると、法人化した方が税率面でのメリットが大きくなるケースが一般的です。
税率の構造上、所得税率が法人税率を超える場合は、会社の設立を検討してみるのも良いでしょう。
法人化するタイミングについては下記の記事で詳しく解説しています。

まとめ
会社設立による節税メリットは上記の通り、役員報酬の給与所得控除、社宅化、出張手当、退職金など、個人事業主では使えない多くの節税手段が存在します。
また、インボイス制度や消費税免税期間のルールをうまく組み合わせることで、事業の成長に合わせた節税設計が可能になります。しかし、会社設立に費用がかかる、赤字でも住民税の均等割額を支払う、税務申告の難易度が上がるなどといったコストや手間も発生します。
事業が軌道にのって、利益が沢山ある場合は会社設立(法人化)の様々なメリット・デメリットを比較して検討してみることをおすすめします。
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