自分で記帳と記帳代行の比較|時間と費用で選ぶ最適な経理体制

日々の業務に追われる中で、

「経理作業に時間を取られて本業が進まない」

「これでいいのか判断がつかず、毎回迷いながら入力している」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さらに近年は、インボイス制度や電子帳簿保存法といったルールへの対応が経理業務の必須項目となり、経理の手間や複雑さは増すばかりです。

経理の負担を減らすために「記帳代行」の利用を検討し始めた際、最も気になるのが「自分でやるか外注するか、どちらが自社にとってメリットが大きいのか?」という点でしょう。

本記事では、費用と作業時間の両面から、自分で記帳する場合と記帳代行に依頼する場合を徹底比較します。また、費用を抑えながら、今の利益や資金繰りをすぐに把握できる「クラウド会計の自動連携を活かしたスマートな経理スタイル」についても解説いたします。自社にとって最も効果的な経理体制を見つけるきっかけとして、ぜひ参考にしてください。

目次

判断軸を整理する

「自分で行うか」「外部に任せるか」を判断する際、単に「月々の外注費が発生するかどうか」だけで比較してしまうと、自社に合った選択を見極めにくくなってしまう可能性があります。

現在の経理体制を検討する際は、以下の4つの判断軸を総合的に評価することが重要です。

費用: 会計ソフト代、記帳代行費用、税理士顧問料などの支払額

所要時間: 領収書・データの整理、入力、インボイスの番号確認、口座連携エラーの解消にかかる時間

正確性・法令順守リスク: 勘定科目の間違いを防ぎ、法改正や税務調査に正しく備えられるか

経営数値の把握スピード: 自社の売上や利益、資金繰りの状況をリアルタイムに把握できるか

「経理代行費を浮かせたい」と費用の削減を優先して自社で処理を続けた結果、本業に使う時間が削られ、売上を落としてしまっては、浮かせた費用以上の損失になりかねません。

とはいえ、記帳代行に任せきりにすると、自社の財務状況が不透明化し、利益や資金繰りが見えなくなる要因にもなります。

こうした事態を防ぐためにも、「自社で行う範囲」「外部へ任せる範囲」を明確に切り分けることが重要です。コストや手間だけでなく、「本業への影響」と「経営数値の把握スピード」のバランスを見極めながら、自社に最適な経理スタイルを設計していきましょう。

自分で記帳する場合

事業者自身(または社内スタッフ)で記帳作業を行う「自計化(じけいか)」のメリット・デメリット、費用や時間の目安を確認しましょう。

費用と時間の目安

直接コスト: 年間 約2万円〜6万円(クラウド会計ソフトの利用料など)

必要な時間: 月 約5時間〜15時間(仕訳数や取引の複雑さにより変動)

自分自身で記帳する場合、発生する直接的な費用は会計ソフトの月額・年額利用料のみに抑えられます。

一方、大きな負担となるのが「時間と手間の増加」です。紙の領収書整理やクレジットカード明細の照合だけでなく、インボイスの適格請求書発行事業者の登録番号の確認作業や、電子受領した領収書データの要件に沿った保存など、確認項目が増加しています。

自分で記帳するのが向いている人

・創業初期で取引数が少なく、時間に比較的ゆとりがある方

・売上や経費の動きを日々自分で細かくチェックしたい方

・簿記の基礎知識があり、会計ソフトやITツールの操作に抵抗がない方

・徹底的に固定費を抑えたい方

記帳代行に出す場合

税理士事務所や外部の専門業者へ経理を委託する「記帳代行」について、費用感や任せられる範囲、メリットを確認していきましょう。

費用相場: 月額 約5,000円〜5万円(仕訳数や取引規模、クラウド会計の自動連携の活用度合いに応じて変動)

主な依頼範囲: 領収書・通帳データ・請求書データの回収、会計ソフトへの入力、預金残高の照合、インボイス確認の代行

一般的な記帳代行の料金体系は「100仕訳まで月額1万円」「200仕訳まで月額2万円」といった仕訳数に応じた従量課金制が多く採用されています。

近年はクラウド会計ソフトとの自動連携を前提にしたサービスも増えており、自動仕訳率が高いほど代行業者側の作業工数が減り、料金が抑えられる傾向にあります。また、電子データでの提出に対応した記帳代行サービスも一般的になってきました。

税理士の詳しい顧問料・オプション相場については、下記の記事で詳しく解説しています。

記帳代行に出すのが向いている人

・本業が多忙で、経理に割く時間をなかなか確保できない方

・複雑な事務手続きや法改正への対応に負担を感じている方

人件費などの固定費を抑えつつ、確実な経理体制を整えたい方

・プロに任せることで、自分の時間や営業活動の時間を確保したい方

「自分の時給」で考える、失敗しない記帳代行の選び方

「外部に頼まなければコストはかからない」と感じるかもしれませんが、経営者や事業主の時間は無料ではありません。記帳代行の価値を正しく判断するには、「その作業に自分の時間をどれだけ投資しているか(自分の時給換算)」という視点で捉え直すことが大切です。

例えば、時給換算「5,000円」の事業主が、月に10時間経理を行っている場合で比較してみましょう。

比較項目自分で記帳する場合記帳代行へ外注する場合
作業時間月10時間(自分で作業)月1時間(資料を送る)
自分の時間コスト
(時給5,000円×時間)
50,000円分5,000円分
実際の支払い費用約3,000円(会計ソフト代)約15,000円(代行費用)
実質的なトータル負担53,000円相当20,000円相当

一見「代行費15,000円は高い」と思えても、自分の時間を考慮すると外注したほうが実質33,000円も浮く計算になります。

この試算はあくまで「浮いた時間をすべて本業の売上につなげられる」ことを前提にした簡易的な比較です。実際には浮いた時間が必ずしもそのまま売上増に直結するとは限らないため、自社の状況(営業時間を増やせば売上が伸びる業態か、時間が空いても稼働率が上がらない業態か)に照らして参考にしてください。

記帳代行を依頼する前に準備しておくべきこと

記帳代行業者へ相談・依頼する前に、以下の準備を行っておくことで、見積もりの算出や導入後の引き継ぎがスムーズになるでしょう。

1. 月間の取引規模(仕訳数)の確認

記帳代行の料金の多くは「仕訳数(取引の件数)」によって決まります。そのため、自社の月間取引数がどのくらいあるかを事前に把握しておくことが大切です。

・通帳の記帳行数(1ヶ月あたりの入出金件数)

・発行や受け取りをする請求書の枚数

・領収書やレシートの枚数(経費精算の件数)

正確な仕訳数が分からなくても、「領収書が月に約50枚、通帳の出し入れが約20件」といった概算を伝えるだけで、適切な見積もりを出してもらいやすくなるでしょう。

2. 現在の経理資料・データの整理

提出が必要となる基本資料の置き場所や管理方法を確認・整理しておきましょう。

銀行口座・クレジットカード情報: Web明細のログイン権限または通帳のコピー

売上・仕入関連の書類: 請求書、納品書、売上データの出力ファイル

経費関連の書類: 領収書、レシート(紙または電子データ)

過去の決算書・申告書: 直近1〜2期分の確定申告書・決算書・総勘定元帳

最近では、紙の領収書を郵送するスタイルだけでなく、スマホで撮影した画像データや電子ファイル(PDF)をクラウド上で共有するスタイルも増えています。

3. 自社の希望(外注したい範囲と予算)の整理

どこからどこまでを任せたいのか、自社の要望を明確にしておきます。

・領収書の入力だけでよいのか、請求書の発行や振込代行まで任せたいのか

・予算は月額いくらまでに抑えたいか

・試算表(毎月の経営数字)はいつまでに欲しいか

あらかじめ優先順位を決めておくことで、無駄なオプション費用を抑えられるだけでなく、見積もり時や導入時の税理士とのやり取りもスムーズに進みます。

記帳代行依頼から業務開始までの流れ

一般的な記帳代行の契約・スタートまでの流れは、以下の4つのステップで進みます。

Step 1:お問い合わせ・ヒアリング
Step 2:見積もり確認・契約締結
Step 3:資料提出のルール決め・業務引き継ぎ
Step 4:記帳代行の運用スタート

Step 1:お問い合わせ・ヒアリング

お問い合わせ後、現状の経理状況や課題についてのヒアリングを受けます。

確認される主な内容 事業内容、売上規模、取引数、現在の会計ソフトの有無、インボイス・電帳法への対応状況など

所要時間: 30分〜1時間程度(オンライン面談または対面)

Step 2:見積もり確認・契約締結

ヒアリング内容をもとに作成された見積もりとプランを確認します。提示された費用に基本料金とオプション料金がどのように含まれているか、また規定の仕訳数を超えた場合の追加料金ルールはどうなっているか、あらかじめしっかり確認しておきましょう。

内容に納得できたら、業務委託契約や秘密保持契約(NDA)を結びます。

Step 3:資料提出のルール決め・業務引き継ぎ

契約後、毎月の資料やり取りに関するルールを細かく決定します。

「毎月〇日までに郵送」「専用フォルダ(DropboxやGoogleドライブ等)へアップロード」などのルール設定を行います。また、チャットツール(Slack、Chatwork等)やメールなど、やり取りの連絡手段を決めます。

Step 4:記帳代行の運用スタート

決定したルールに沿って毎月の運用を開始します。基本的には「資料を渡して、成果物を受け取る」の繰り返しです。

毎月のプロセス主な作業内容
① 資料・データの送付領収書や請求書、通帳データ等を代行業者へ共有する
② 記帳代行代行業者にて入力、勘定科目の判断、インボイス等の確認を実施
③ 不明点のやり取り「使途不明の領収書」「内容未確認の振込」等の質問に回答する
④ 納品確認完成した月次試算表データを受け取り、最新の経営数字を確認する

記帳代行を成功させるための3つのポイント

記帳代行で「経理をぐっと楽にする」ためには、以下の3つが重要です。

① 事業用のカード・口座を一本化する
個人用と混ざっていたり現金払いが多かったりすると、確認の手間が増えて費用が上がりがちです。事業用口座やカードに集約すれば、データ共有だけでスムーズに完了します。

② 資料の提出期限を守る
提出が遅れると試算表の作成も遅れ、最新の経営数字が見えなくなります。毎月の提出日を決めて習慣化しましょう。

③ インボイス・電帳法の運用ルールを揃える
電子データの保存など、紙とデータそれぞれの提出方法や管理ルールを事前に担当者とすり合わせておきましょう。

なお、2027年1月からは電子帳簿保存法に関する新たなルールが施行されます。一定の要件を満たして電子取引データを保存した場合に重加算税の加重措置の対象外となるほか、個人事業主は青色申告特別控除の上乗せが受けられるなど、対応した事業者を優遇する内容です。記帳代行業者側がこれらの要件に対応できるかを、契約前に確認しておくとよいでしょう。

インボイス制度について

免税事業者など適格請求書発行事業者以外からの仕入れにかかる仕入税額控除の経過措置は、これまで「2026年9月30日まで80%控除」とされていました。

令和8年度税制改正により経過措置が2年延長され、控除割合の引き下げが4段階に細分化されています。最終的に控除がなくなる時期も、当初予定の2029年9月から2031年9月へと2年延びました。

期間控除割合
〜2026年9月30日80%控除
2026年10月1日〜2028年9月30日70%控除
2028年10月1日〜2030年9月30日50%控除
2030年10月1日〜2031年9月30日30%控除
2031年10月1日以降控除不可(0%)

免税事業者との取引がある企業は、10月以降の控除割合の変更に合わせて、会計ソフトの区分設定や記帳代行業者との認識合わせを早めに済ませておく必要があります。

2割特例は「令和8年(2026年)9月30日を含む課税期間」までで終了します。暦年で申告する個人事業者は令和8年分(2026年12月31日まで)が最後の適用となり、その後の令和9年分・令和10年分(2027年・2028年)については、納税額を売上に係る消費税額の3割とする「3割特例」に切り替わります。令和11年分(2029年)からは本則課税または簡易課税を選択することになるでしょう。

このように、免税事業者との取引がある企業ほど、記帳代行に依頼する際の「インボイス登録番号の確認」や「控除割合の区分管理」の重要性が増しているといえるでしょう。

クラウド会計での自計化+税理士チェック

「自分で全作業を行うのは時間が足りないけれど、毎月数万円の記帳代行費用を払うのも厳しい…」

そう悩む事業者様におすすめなのが、従来の「完全自力」か「完全外注(代行)」の2択に絞る必要はない、「クラウド会計を活用した効率的な自計化+専門家サポート」という選択肢です。

コストを抑えつつ数字がリアルタイムで見える

freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフトを活用すると、銀行口座やクレジットカード、POSレジ、決済サービスと自動連携できます。明細データが自動で取り込まれ、AIによる自動推測が働くため、手入力の手間が大幅に削減されます。

この体制を整えたうえで、日々の自動連携・簡易処理のみを自社で行い、「勘定科目の修正や専門的な税務チェックのみを税理士に依頼する」という運用がおすすめです。

費用の削減: 完全代行よりも作業工数が減るため、顧問料・サポート費用を安く抑えられる

リアルタイム経営:今月の売上・利益・資金繰りが即座に可視化される

スピーディーな経営判断: 自社の数字の流れを常に把握できるため、融資や投資の判断が素早くなる

オンラインで完結するサポート体制については、下記の記事で詳しく解説しています。

自社に合うかどうかの判断基準

非常にバランスの良い方法ですが、すべての人に適しているわけではありません。以下の条件に当てはまるか確認しましょう。

スマホやPCでのWebツール操作に強い拒否感がないこと

事業用口座・クレジットカードがプライベートと完全に分離できていること

月に1〜2回、画面を開いて自動連携の確認・登録を行う習慣が持てること

現金取引が極端に多い業種(一部の店舗型ビジネスなど)や、パソコン操作がどうしても苦手な方の場合は、無理に自計化を図るよりも記帳代行へ全面的に委託するほうがスムーズな場合もあります。

すべてを委託するリスク

1. 試算表が見えるまでにタイムラグが生じる

記帳代行では、事業者が領収書やデータをまとめて送付し、業者がそれを入力して試算表を作成します。そのため、「先月の確定数字がわかるのが今月下旬〜来月頭になる」というタイムラグが構造上発生するでしょう。

リアルタイムな財務状況が把握できていないと、「今いくら投資に回せるか」を即座に判断できず、スピード感のある経営が不可能です。結果として、絶好のビジネスチャンスを逃す大きなリスクにつながります。

2. 「資料を共有・整理する作業」からは逃れられない

すべてお任せすると言っても、領収書の発行元や取引の目的を把握しているのは事業者自身だけです。電子データの共有や、「この出費は何の目的ですか?」という確認への回答など、最低限のやり取りは必ず発生します。

提出や確認が遅れると記帳作業も遅延し、確定申告の間際になって慌てる原因にもなるでしょう。

まとめ

記帳代行の活用は、単なる「面倒な事務作業の外注」ではなく、経営者や担当者の貴重な時間を作り出すための価値ある「投資」になります。

記帳代行を失敗なくスタートさせるポイントは、依頼前に「任せたい業務の範囲」と「おおよその取引数」を整理し、運用開始後は「資料提出の期限」をしっかり守ることが大切です。

特に電子帳簿保存法はすでに電子データ保存が原則義務化されたルールであり、猶予措置を使う場合も要件を満たしているかの確認が欠かせません。あわせてインボイス制度も2026年10月から経過措置の控除割合が段階的に縮小し、個人事業者の2割特例も2026年9月で終了するなど、対応の必要性は今後さらに高まっていきます。

事前にデータ送付のルールや、取引先の登録状況の確認方法を定めておくことで、導入後の行き違いや確認の手間を未然に防ぐことができます。

最初からすべての書類を完全に整理しておく必要はありません。「何から手を付ければいいかわからない」「自社に必要な資料が判別できない」という場合でも、税理士事務所や専門業者であれば、最初のヒアリング段階から親身になって準備をサポートしてくれるでしょう。

毎月の経理作業に追われる負担を解消し、本来注力すべき本業や事業の成長に専念するための第一歩として、プロへの事前相談や見積もり依頼から気軽に検討してみてはいかがでしょうか。

弊事務所においても、クラウド会計(freee・マネーフォワード)を活用した記帳代行と、「自計化+税理士チェック」の両プランをご用意しています。初回無料の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

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