青色申告と白色申告の違いは?税理士がわかりやすく解説
「青色申告と白色申告はどんな違いがあるの?」
「青色申告と白色申告のメリット・デメリットはなに?」
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類の方法がありますが、どのような違いがあるのか、どちらを選ぶべきか気になっている方もいらっしゃると思います。
当記事では、青色申告と白色申告の違いやそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
青色申告と白色申告の違いは?
青色申告は、複式簿記で帳簿をつける必要や一定の帳簿を保存する義務が付されており、確定申告の方法の一つです。
事前の承認、帳簿の作成や提出書類の準備に手間がかかりますが、税制上の優遇措置などの特典があります。
白色申告は、青色申告の事前の承認を受けていない人が確定申告する場合の申告方法です。
青色申告と比べて、帳簿の作成や提出書類の準備が簡略化されており、青色申告より手間がかからないことが特徴です。
詳しくは以下で解説していきます。
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
対象者 | 不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかがあり、青色申告の承認を受けた人 | 青色申告の承認を受けてない人 | |
税制優遇措置 | あり | なし | |
事前申請の有無 | 申告年の3月15日までに「開業届」と「青色申告承認申請書」を所管の税務署に提出* | なし | |
提出書類 | ①確定申告書 ②青色申告決算書 | ①確定申告書 ②青色申告決算書(貸借対照表は作成義務なし) | 確定申告書のみ |
保存帳簿 | ①現金出納帳 ②売掛帳 ③買掛帳 ④経費帳 ⑤固定資産台帳 ⑥総勘定元帳 ⑦仕訳帳 など | ①現金出納帳 ②売掛帳 ③買掛帳 ④経費帳 ⑤固定資産台帳 | 簡易的な記載の帳簿 |
記帳方法 | 複式簿記 | 単式簿記 | 単式簿記 |
不動産所得要件 | アパート等は10室以上 独立家屋は5棟以上 | マンション1室から | なし |
出典:国税庁HP No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
税制上の優遇措置の違い
青色申告では、税制優遇措置が複数あります。(詳細は青色申告のメリット参照)
青色申告の代表的な税制優遇措置として、所得から一定金額を控除(青色申告特別控除)することができます。
白色申告には税制優遇措置がありません。
青色申告特別控除
〈複式簿記・指定の書類作成・提出などの一定要件〉
55万円控除
〈複式簿記・指定の書類作成・提出などの一定要件〉+〈電子帳簿保存法の要件〉or〈e-tax利用〉
65万円控除
〈上記以外〉
10万円控除
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
税制優遇措置 | あり | なし |
事前申請の有無の違い
青色申告をする場合は原則、申告年の3月15日までに「開業届」と「青色申告承認申請書」を所管の税務署に提出*する必要がありますが、白色申告は事前申請は不要となります。
後述の青色申告のメリットを享受するためにも、開業予定の方、開業して間もない方は青色申告の事前申請について検討してみましょう。
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
事前申請の有無 | 申告年の3月15日までに「開業届」と「青色申告承認申請書」を所管の税務署に提出* | なし |
提出書類・保存帳簿や書類の違い
確定申告に必要な書類や保存義務のある帳簿は、青色申告の方が圧倒的に多くなるため、手間がかかります。
特に青色申告の場合は原則、青色申告決算書(貸借対照表と損益計算書)を作成する必要があり、簿記の知識や経理の経験がない人にとっては、ハードルが高くなります。
一方で、白色申告の場合は収支決算書を作成するため、簡易的な記載の帳簿で済みます。
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
提出書類 | ①確定申告書 ②青色申告決算書 | ①確定申告書 ②青色申告決算書(貸借対照表は作成義務なし) | 確定申告書のみ |
保存帳簿 | ①現金出納帳 ②売掛帳 ③買掛帳 ④経費帳 ⑤固定資産台帳 ⑥総勘定元帳 ⑦仕訳帳 など | ①現金出納帳 ②売掛帳 ③買掛帳 ④経費帳 ⑤固定資産台帳 | 簡易的な記載の帳簿 |
記帳方法の違い
上述の通り、青色申告は原則、複式簿記で記帳し、白色申告は単式簿記で記帳します。
複式簿記とは、取引ごとに勘定の借方(かりかた)と勘定の貸方(かしかた)という概念を用いて、2つの側面で記帳を実施していきます。
(例)現金で水道光熱費を1,000円払った場合の記帳方法
➡(借方)水道光熱費1,000円 (貸方)現金1,000円 日付:1/1 摘要:事務所光熱費
単式簿記とは、1つの取引に対して1つの記録をする方法で、簡単に例えるなら「お小遣い帳」のようなものです。
(例)現金で水道光熱費を1,000円払った場合の記録方法
➡水道光熱費1,000円 日付:1/1 摘要:事務所光熱費
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
記帳方法 | 複式簿記 | 単式簿記 | 単式簿記 |
不動産所得の要件の違い
不動産にかかる所得がある場合は、青色申告の特別控除(65万円)が適用されるための要件として、アパートの場合は10室以上、独立家屋は5棟以上などがあります。
白色申告には特別控除はないので、特段の要件等はありません。
青色申告(65万円控除) | 青色申告(10万円控除) | 白色申告 | |
不動産所得要件 | アパート等は10室以上 独立家屋は5棟以上 | マンション1室から | なし |
青色申告のメリット・デメリット
青:メリット① 青色申告特別控除が受けられる
青色申告では、最大で65万円の特別控除が受けられるため、税金が安くなるメリットがあります。
例えば、所得が1,000万円の個人事業主が青色申告特別控除(65万円)を適用した場合は、20万円前後の所得税が軽減されるケース*もあります。
簡易的な記載の帳簿でも10万円の特別控除があるので、検討してみましょう。
*個人の控除やその他の税制によって軽減額は変動するため、参考値となります。
青:メリット② 赤字を3年間繰り越すことが可能
青色申告の場合は、赤字を翌年度以降3年間繰り越すことが可能となります。
例えば、1年目の所得は赤字のため、マイナス100万円、2年目の所得が500万円だった場合は以下の通りです。
申告方法 | 1年目所得 | 2年目所得 |
白色申告 | -100万円(課税なし) | 500万円 |
青色申告 | -100万円(課税なし) | 400万円(500万円-100万円) |
また、前年に青色申告で所得税を納めており、今年に損失が発生している場合は、前年分の所得税の還付を受けることも可能となります。
青:メリット③ 配偶者や親族への給与が全額必要経費にできる(青色事業専従者給与)
原則、親族や配偶者などに支払う給与は、個人事業主の収入を分散させているとみなされるので、経費に計上できません。
この点、青色申告者は一定の要件を満たす場合は、同一生計の配偶者やその他親族に支払った給与を必要経費に算入することができ、この給与を青色事業専従者給与といいます。
青色事業専従者給与は、事前の届出が必要のため、詳細については以下を参照ください。
青:メリット④ 30万円未満の固定資産を一括で経費計上できる
PCや社用車などの事業用資産を購入した場合、原則、耐用年数に応じて一定期間に経費化していきます。
この点、青色申告者は30万円未満の固定資産を一括で経費計上することができるため、購入した年の税金を抑えることができます(一定の要件があります)。
青:メリット⑤ 家事関連費を必要経費にできる
青色申告では、事業とプライベートで共用しているものに紐づく費用について「家事按分」することができるので、白色申告と比べて、経費にできる幅が広がります。
たとえば、個人事業主・フリーランスの方が、自宅の一室を仕事部屋として利用している場合は、家賃や光熱費の一部を経費に計上することが認められます*。
*家事按分する場合は合理的な根拠に基づく按分割合を定義する必要があり、税務調査でも指摘されやすい項目のため、詳細は税理士などの専門家に相談することをオススメします。
青:デメリット① 事前申請が必要
上述の通り、青色申告をする場合は事前申請が必要となります。
事前の申請期限を過ぎてしまった場合、その年は青色申告で確定申告することが出来ないので、注意しましょう。
青:デメリット② 複式簿記での記帳や必要書類の準備に手間がかかる
青色申告では複式簿記での記帳や多数の必要書類、保存帳簿義務があるため、簿記などの専門的な知識が必要となることがあり、手間もかかってしまいます。
御自身で青色申告をするのが難しい方、経営に集中したいと考えている方は税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。
幣事務所においても、個人事業主・フリーランスや法人化などの開業全般サポート・税務顧問に力を入れておりますので、疑問点や不安がある方は初回無料の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。
白色申告のメリット・デメリット
白:メリット① 記帳がシンプルで手続が簡単
白色申告の場合、単式簿記(簡易的な記帳)で済むため、記帳などの手続が簡単です。
確定申告は収支内訳書という簡素化された書類を提出することになります。
白:メリット② 事前手続が不要
白色申告の場合は、青色申告承認申請のような事前手続が不要のため、事務的な手続きの負担が軽減されます。
白:デメリット 青色申告特有のメリットが無くなってしまう
白色申告では、青色申告特有のメリット(税制優遇措置等)が全て無くなってしまうため、税金計算など様々な面で、青色申告より損をしてしまう可能性があります。
特に大きなデメリットとしては、青色申告特別控除や赤字の繰り越しが出来ないなどの税額に直結するような点は注意が必要です。
まとめ
多くの事業者にとって、白色申告より青色申告の方がメリットが多いと言えるでしょう。
実際には、青色申告の手間や専門家に依頼する場合などの費用と白色申告のデメリットを比較して考えると良いでしょう。
もし、当記事の内容や確定申告全般に関して、疑問点や不安がある方は初回無料の相談窓口まで、お気軽にお問い合わせください。
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